元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

【元空挺隊員が語る】陸上自衛隊第1空挺団での幹部自衛官としての勤務シリーズ⑪ 〜2度目の訓練検閲 いよいよ空挺降下へ〜

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陸上自衛隊公式HPより引用)

こんにちは。

元・国防男子の大吉です。

 

今日の記事は前回の記事の続きで、僕が経験した空挺団で2度目の訓練検閲の中身について記載したいと思います。

予想していたとおり、訓練検閲は波乱の連続でした・・・・

 

以前の記事を見ていない人は、是非こちらを読んでください!

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www.future-oriented.com

 

 

木更津駐屯地から搭乗して東富士演習場

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陸上自衛隊第1空挺団公式HPより引用)

 

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木更津駐屯地から東富士演習場までヘリで約30分

かなり重い荷物を体に付けて搭乗し、降下まで待機しなければならない。

CHー47の中は、すし詰め状態

真夏ということもあり、かなり暑い

 

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実際は、この写真に個人毎の背嚢(リュックサック)小銃がプラスされた状態

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陸上自衛隊第1空挺団公式HPより引用)

東富士演習場に近づいてくると、降下長からの降下準備号令がかかった。

これから、いよいよ降下をして訓練検閲が始まる。

 

まずは、降下で怪我をしないようにしなければならない。

東富士演習場での降下で一番怖いのが着地時の怪我

地隙があったり大きな岩がゴロゴロしており、

着地地点が悪かった場合、岩の上に乗って足首を捻ってしまったり、5点着地(衝撃を殺しながら着地する方法)をしたときに大きな石に当たって骨折してしまう場合がある。

 

空挺団では、「骨折以外は怪我ではない。」と言われている。 

訓練で肋骨を折っていても100km歩いて最後まで訓練を乗り切った隊員や、足の指の骨を折っていても100km歩いた隊員もいるような部隊。 

怪我をしたのは、運もあるが自分の責任

どんなに痛くても、苦しくてもとてつもない「気合」「根性」で乗り切る

周りの環境がそんな感じなので、幹部自衛官が怪我を理由に離脱はできない

 

怪我をしないことを祈りながら降下長の降下開始の合図を待った。

地獄の上空待機

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陸上自衛隊第1ヘリ団HPより引用)

降下地域の風速が速いため、降下場にいる降下誘導班から降下待機がかかっているようだ。

降下場には、航空機を誘導したり、降下地域の風向や風速を計測したりする隊員が事前潜入している。

 

風はすぐに止むと判断したのだろうか・・・

風が収まるまで、ヘリは上空で旋回することになった。

 

僕は、中隊長に引き続いて2番目の降下だったので、降下扉から外の景色がよく見れた。

駿河湾、箱根、富士山、愛鷹山系・・・

これが訓練でなければ最高なんだけどな・・・

 

しばらくして一度降下準備のために立って飛び出す準備をしていたが、降下長の隊員から一度座るように指示があった。

 

(これは長期戦になりそうだな・・・)

 

そんなとき、ある不安が頭を過った。

 

「リペリング降下」

(前回の記事で記載したが、僕はリペリング経験が殆ど無かった。)

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陸上自衛隊公式HPより引用)

おいおい空挺降下中止になって、まさかリペリングで降下ってことにはならないよな・・・

 

僕が一番恐れていた事態・・・

 

頼むから落下傘降下させてくれ〜

 

心の底から祈り続けた。

 

そして20分後くらい経過。

降下長から号令があった。

 

「気象!!」

 

「風向、◯◯の風。進行方向に対して◯◯の風」

 

「風速、最大6m。」

 

降下可能!

 

よっしゃー!!

やっと降下できる。

 

降下長の号令は続く。

 

「いっせんかーい(1旋回)、いくぞ(オウ!)、いくぞ(オウ!)、いくぞ(オウ!)」

 

「降下よーい! 立て!」

 

「そーぐ(装具)点検!」 

 

「報告!」(「異状なし!」)

 

「この位置まで前へ!」

 

数歩踏み出せば、飛び降りれる位置まで移動した。

 

降下長の「降下」の号令がかかれば、いつでも降下できる状態

 

降下前に、降下動作してから集結するまでの動きをもう一度頭の中で確認する。

 

ん??ヘリが再び旋回してる?

 

何で旋回してるんだ??

 

地上の風が強まったのか、

中々「降下」の号令がかからない

ヘリはまた旋回を始めてしまった

 

そのまま15分くらい経過

 

ヘリが揺れて、何度も降下扉から落ちそうになる

 

どうなってるんだ?

もうマジで限界・・・

いつまで待たせるんだ?

早くしてくれ〜

 

自分の体重くらいある重い荷物を背負って不安定なヘリの中自動策を持つ手を挙げての待機

 

肩と腰に負担がかかり、苦しい

そして、落下傘の自動索を持っている側には小銃を縛り付けているので、血流が悪くなり痺れて腕の感覚が無くなってきた

 

更にはエンジンに匂い、暑さ、荷物の重さ、寝不足、航空機の旋回で航空機酔い

 

食道の辺りまで“”が来ている・・・

 

やばい、本当に吐きそう!

本当にもう限界・・・

 

どこでもいいから早く落としてくれ〜

 

イライラはMAX

降下する時の恐怖心よりも、早く航空機の中から出たいという気持ちのほうが強かった。

そして、悲願の空挺降下

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陸上自衛隊第1空挺団公式HPより引用)

やっと、降下ランプが青に変わり「降下」号令がかかった。

今にも吐きそうな状態で、中隊長に引き続いて飛び出した。

 

落下傘は異常なく開傘し、長時間苦しんだ分、景色は抜群に綺麗に感じた。

 

できるだけ、傘集積場近くに降下したいが・・・

 

思ったより風が強く、風に流される

降下後、傘集積場まで落下傘の主傘と予備傘を運ばなければならない

自分の荷物と合わせると60kg以上ある荷物を担いで、集積場まで運ぶ。

 

上空50m地点で、背嚢を切り離す。

 

どんどん集積場から遠ざかってしまう

しかも、集積場までは上り坂

 

「これ、死ぬな・・・」 

 

今度は着地に集中する。

怪我をしないように、傘を操縦して少しでも安全な場所に着地したい

 

「あーー!」

 

ドカッ!!

 

運悪く地隙に激突してしまった。

頭を強打して、衝撃を殺すための5点着地ができなかった

 

(足は大丈夫か??)

 

着地するやいなや、風速が早いために風で落下傘が飛ばされて、体が引きづられてしまう

 (でも、怪我は無さそう。)

急いで起き上がり、風上に周り込んで落下傘を畳む

 

はぁ・・・

結構、傘集積場から離れてしまった・・・

 

60kgの荷物を背負って、500mから600mくらい走って登った

これだけで、かなり体力を消耗してしまった。

 

全員が降下を終えて、集結地に集結完了。

降下するのが久しぶりだった上級陸曹が1名足を捻挫で負傷してそのまま後送

それ以外は異状なし。

空挺降下の場合降下での少しの損耗は考慮に入れているので、それが1名だけで良かった。

そして、悲劇はまだまだ続く

中隊の降下完了を団本部に報告した後、

団本部からの無線が入った。

 

米軍の物料投下訓練のため、1500にLD※を通過せよ。

※ Line of Departure

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陸上自衛隊第1空挺団公式HPより引用)

実は、東富士演習場を含めて日本の演習場の使用は米軍の訓練が優先される。

陸上自衛隊にとって1年くらい前から計画されている大切な訓練検閲であっても、突如入ってきた米軍の訓練が優先させてしまうのだ。

それに、物料投下となると投下地域に人員がいたら危険、かつ風向によりどこに落ちるかわからないため、演習場地域の大部分が使用制限を受けてしまう

 

現在時、1100頃

 

えっ!? 4時間も待機???

 

8月下旬の灼熱の太陽が降り注ぐ東富士演習場

集結地域は、草が刈り取られていて、ほとんど日陰がない状態

そのため、真夏の直射日光を浴び続ける

 

こんな日陰もないところで、4時間近くも待機するのか・・・

重い鉄帽を被り、暑苦しい迷彩服も着ている。

それに、顔にはドーランを塗っていたので、汗でドーランが垂れてきて、汚水が目の中に入って目が痛い。

新陳代謝も阻害されるため、唇が乾き、喉も渇く

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 


「自衛隊」ドーランの塗り方(メイク術) 元自衛隊芸人トッカグン

 

周囲を警戒しながら、待機し続けた。

 

暑さのため、汗が滝のように出ていく

そして、大切な水がどんどん消費されていく・・・

真夏の100km行軍のために準備した水が減少していく・・・

 

あぁ、地獄

 

そして、これからの100km行軍はもっと地獄・・・

 

さすがにこんな事態は予測していなかった

 

枯れ草を積み重ねて、少しでも日陰を作り耐え忍んだ

 

途中、作戦準備間に寝ていなかったこともあり、こんなに暑い状況でも眠くなった。

 

米軍の物料投下が終わるまでは、訓練統裁部も何もできない

 

訓練中なのに辺りは静かで、枯れ草が風でカサカサ音を立てている。

それが更に眠気を誘った。

 

猛暑の中、草むらの中で眠りについた・・・

 

 

「はっ!?」

 

検閲中なので、流石に眠りは浅かった。

というよりは、暑さで目が覚めた。

 

時計を見たら、1400くらい。

 

「良かった、寝過ごしていない。」

 

幸いにも100km行軍前に1時間ちょっとの睡眠時間を取ることができた。

これだけの睡眠でもかなり頭の中がスッキリした

 

出発まであと1時間弱くらい余裕があったので、睡眠中に汗となって出てしまった水分と塩分を補給し、汗で流れてしまったドーランを塗り直して行進準備を整えた。

 

当初の計画よりも大幅に行軍のスタートが遅れてしまった

隊員たちが用意した水も確実に減ってしまっている・・・

 

再び地獄の予感・・・

 

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回は、今回の続きについての記事を書く予定です。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

 

元・国防男子 大吉