元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

【元空挺隊員が語る】陸上自衛隊第1空挺団での幹部自衛官としての勤務シリーズ⑤ 〜福島原発事故災害派遣への出陣前の空挺団長の訓話〜 すごい女性自衛官

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おはようございます。

元・国防男子の大吉です。

 

今日から僕が現役時代に経験した「東日本大震災での福島原発事故災害派遣」に関する記事を書きます。

今日は、災害派遣出発前の空挺団長の訓話が素晴らしかったので紹介したいと思います。

ある女性自衛官のすごいプロ意識を感じた話です。

 

 

東日本大震災での福島原発事故災害派遣

東日本大震災の発災

第1空挺団に所属していたときのこと。

 

2011年3月11日の金曜日

 

部隊で机に向かって仕事をしていたら、急に建物が揺れ始めた。

こんなに大きな揺れを感じたのは久しぶり。

これは只事ではないな・・・と思いつつ、

急いで机の下に潜り込み、中帽というヘルメットをすぐに被り、

揺れが収まった時間を見計らって階段を駆け下りて外に出た。

 

その揺れは幾度となく続き、立っているだけで気持ち悪くなったほど。

 

これはやばいぞ!!

 

至急、団本部へ行って地震の状況を確認

団本部のテレビでは、津波が町を次々と飲み込む様子が放映されている。

あまりにも凄惨な状況に言葉を失った。

 

程なくして、隊舎の事務室に戻ると、窓の外から大きな炎が見えた。

千葉県市原市石油コンビナートで火災が発生していたのだ。

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(出典http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103110577.html

 

どうなってしまうんだろうか・・・

 

あぁ、しばらく家に帰れなくなるな・・・

今日は、彼女と会う予定だったんだけどな・・・

 

彼女は大丈夫だろうか。

都内に出かけるって言ってたけど・・・

何度電話をしても繋がらない

安否確認のメールを送信して無事であることを祈った。 

 

長丁場になることを覚悟した僕は、一度家に必要な生活用品を取りに帰った。

 

家の中は、食器が食器棚から落ちてぐちゃぐちゃ。

 

あぁ、本当にこれからどうなってしまうんだろう・・・

先が全然読めない。

千葉県内での災害派遣

習志野駐屯地のある千葉県内でも多数の地域で被害がでていることが判明し、空挺団にもすぐに災害派遣命令がかかった。

 

被害状況が広範囲かつ大きすぎたため、東日本災害派遣への

陸上自衛隊の運用計画には時間がかかった。

 

空挺団としては当初は責任地域の千葉県内での災害派遣で、

被害状況の偵察給水支援等を行った。

 

偵察で幕張の海浜地域に行ったとき、電柱がバタバタと倒れ

道路は波打ってグニャグニャ

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(出典:http://media.index-japan.jp/archives/9015

 

そして、液状化現象も発生している・・・

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https://archive-shinsai.yahoo.co.jp/user/ZKGFG5KFS2JQQ4JWQ4G4EDZ3TM/entry/4534/?s=18

 

マンホールが隆起しているところもあった。

 

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(出典:http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103180170.html

 

本当にひどい光景・・・

 

原子力災害への災害派遣

発災から1週間ほど経って、東日本大震災における空挺団の運用

決まった。

 

福島第1原子力発電所への災害派遣

 

えっ原子力災害への災害派遣??

 

どうやら他部隊が実施する予定の任務だったのだが、

空挺団に回ってきたようだ

 

放射線という見えない敵との戦い

 

部隊にある装備品は極めて貧弱

 

こんな貧弱な装備品で行けというのか・・・

放射線のこともよくわからないのに・・・

放射線を浴びたら、どんなことになるんだろ・・・

いくら「第1狂ってる団」って言われててもな・・・

 

原子力災害派遣という初めての任務

不安ばかりが隊員達の頭をよぎる。

 

でも・・・・、命令だから仕方ない

 

入隊のときには、「事に臨んでは危険 を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつ て国民の負託にこたえることを誓います。」ということを宣誓したしな。

 

自衛隊員の服務の宣誓

私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の 使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、 一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて 専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険 を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつ て国民の負託にこたえることを誓います。

 

幹部自衛官は、率先垂範(そっせんすいはん)。

 

自分が先頭に立って動かなければ、部下は絶対に付いてこない。

まだ結婚もしていないのにな・・・

子供には影響あるのかな??・・

でも、幹部自衛官として部隊を率いていかなければならない立場

腹を決めた

福島原子力災害への災害派遣前夜

そんな中、災害派遣に参加する空挺団の各部隊が駐屯地の体育館

に集められた。

今回の災害派遣の任務、放射線の説明、部隊で装備している放射線線量計

使用要領、空挺団長による訓話が実施された。

 

こういうときのリーダーの訓話はとても大事

隊員達を奮い立たせて、任務に向かわせなければならない

例え、それが危険な任務だとわかっていても・・・・

 

空挺団長は隊員たちを任務に向かわせるのに適切かつ感銘を受けるような話をしてくれた。

 

それは、阪神・淡路大震災でのある陸曹の女性自衛官の話。

 

1995年1月17日、阪神・淡路大震災の発災

僕はまだ小学生。

そんな昔の話だが、女性自衛官の強さを改めて感じた訓話だった。

 

阪神淡路大震災発災後、関西地区の陸上自衛隊災害派遣命令がかかった。

 

高速道路も横転し、建物も倒壊各地で火災が発生していた。

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(出典:https://www.google.co.jp/search?q=%E9%98%AA%E7%A5%9E%E6%B7%A1%E8%B7%AF%E5%A4%A7%E9%9C%87%E7%81%BD&rlz=1C5CHFA_enJP808&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwikrqfR7tncAhVQhrwKHfbaCeMQ_AUICygC&biw=1440&bih=803#imgrc=1YI4EvdKsOGrOM:) 

 

陸上自衛隊として、任務を行うにあたってはまず「偵察」が必要。

陸上自衛隊保有するヘリコプターで上空から偵察し、

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そして、車両及びバイクで地上から被害状況使用できる経路等の偵察を行う。

 

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(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/73%E5%BC%8F%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF

 

ある男性自衛官と女性自衛官が、陸上自衛隊の小型車両で偵察を行っていたときのこと。

発災当初で、高速道路が倒壊し、ビルや住宅地の壁等も破壊されて瓦礫が道路を塞いでいる状態

信号も機能しておらず、インフラも麻痺状態

 

そういう中での偵察。

 

道路は大渋滞で、偵察に出かけたものの全然前に進めない

数時間運転したが、数キロしか進めない状態。

 

そんな中、隣の助手席に座っていた女性自衛官はトイレに行きたくなってしまった

しかし、道路は渋滞で全く進まない。

仕方なく、途中で車両から降りて近くの公園のトイレを探して用を達した

男性ならこういう状況なので、隠れてそこらへんでもできるが女性なのでそういうわけにはいかない。

 

この女性は、このことにとても責任を感じてしまったようだ。

偵察任務中にトイレに行って、トイレを探し回って時間を無駄にしてしまった・・・

それに、当時はまだ陸上自衛隊に対して多くの国民から理解がなかった時代

そんな中、迷彩服を着たまま街中をウロウロするのには抵抗があったのかもしれない。

 

その日は、あまり偵察らしい偵察ができないまま終了してしまった。

 

そして、次の日。

同じメンバーで再び車両での偵察を行うことになった。

昨日と同じでなかなか車両を前に進めることができなかった。

 

しばらく偵察をした後、

男性自衛官は女性のことを気にして、

「結構時間が経っているけど、トイレは大丈夫?」と尋ねた。

 

そして、その女性自衛官は答えた。

「大丈夫です。今日は、トイレに行かなくてもいいようにおしめをしてきましたので。」

 

僕は、この話を聞いてものすごく衝撃を受けた。

ドライバーだった男性ももちろん衝撃を受けたことだろう。

 

自分に与えられた任務を忠実にこなすために、ここまでできる女性自衛官がいたんだ

自分ならこういうことができるだろうか・・・

そこらへんで用を達してしまうよな・・・

 

同じ部隊の男性自衛官がいるのに、恥ずかしくなかったのだろうか・・・

 

与えられた任務を達成することだけに集中する。

その他の自分の生理的欲求すらも排除してしまう。

ひたすら任務に忠実。

すごいプロ意識。

 

空挺団長からこの話を聞いて、奮起した。

女性自衛官でもプロ意識を持った、すごい人がいる

 

陸上自衛隊最強と呼ばれている俺達もやるしかない。

これまでに無かった、初めての原子力災害での災害派遣

俺たちしかできないから、この厳しい任務が回ってきた

俺たちがやらなければ、誰もできない

 

そういう気持ちにさせてくれた。

 

最後に

災害派遣前にこの女性自衛官の話にはとても感銘を受け、勇気づけられた。

そして、言葉の力ってすごいなと感じた。

隊員たちの意識を変え、やる気にさせて行動に移させてしまう

 

これから原子力災害派遣に向かう僕たちにとっては、心にグサッと刺さった訓話

これまで陸上自衛隊で数々の訓話や講話を受けてきた。

殆どの訓話は忘れてしまっているが、7年程経過した今でもこの訓話はしっかりと覚えている。

それだけ、僕にとっては印象深かった話。

 

こういう話ができるように、これからも精進しようと思う。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

 

元・国防男子 大吉