元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

【元空挺隊員が語る】陸上自衛隊第1空挺団での幹部自衛官としての勤務シリーズ④ 〜波乱万丈な中隊 その2〜

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こんにちは。

元・国防男子の大吉です。

 

今日は、先日の引き続き「波乱万丈な中隊」の続きの記事を書きたいと思います。

 

中隊に大きな不幸が起こり、中隊の雰囲気がとても暗くなって

しまいました。

でも、実はこれは僕の責任だったんです。

そんな中、中隊長の代わりとしての役割を与えられた

大吉2尉が取った行動は・・・

きついときこそ、多くの学びがあることを実感しました。

 

前回の記事をまだ読んでいない人は、この記事も読んでみてください。

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future-oriented.hatenablog.com

 

 

中隊長の死を乗り越えて

 初めての初降下行事

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

 空挺団の3大イベントの一つである、初降下行事

毎年、防衛大臣陸上幕僚長が参加する。

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(出典:朝日デジタル:https://www.asahi.com/articles/photo/AS20180112004951.html

 

初降下行事は、防衛大臣がヘリで習志野演習場に降着した後、

指揮官降下という、空挺団長以下空挺団各部隊の指揮官による降下で

行事の幕を開ける。

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陸上自衛隊第1空挺団公式HPより引用)

 

その指揮官降下では、中隊長が入院中で不在だったので

うちの中隊からの指揮官降下は無かった

 

そして、空挺団では、初降下行事のときに各部隊毎に野宴を行う。

指揮官降下隊員達による訓練展示が終了した後、

が始まるのだ。

 

野宴中には、防衛大臣が各部隊の野宴場を順番に「乾杯」をして回る。

そして、写真撮影

 

でも、やっぱり中隊長がいないといまいち盛り上がらない

 

この時、病気の中隊長に代わって、次の人事異動で中隊長に

上番(じょうばん)する中隊長が顔を出してくれた。

 

「大吉くんか?先任から話は聞いている。頑張っているようですね。」

「次の人事異動で中隊長に上番する予定だから、それまで何とか頑張ってください。」

 

年は45歳くらいで、かなり物腰が柔らかく徳のありそうな人

陸士時代から空挺団に所属していたベテラン

 

「あぁ、次の中隊長はこんな人か。」

「優しそうな人で良かった!3月末が楽しみだ!」

 

中隊長の死

ある日曜日。

その日は久しぶりに、彼女と千葉県市川市にある市川ぞうの国に出かけていた。

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(出典:市川ぞうの国HP)

 

ゾウが椅子に座ったりサッカーをしたり・・・

初めて目にするゾウたちのショーに驚かされた。

ゾウも訓練をすれば、こんなことまでできるようになるんだと感心していた。

 

ぞうのショーを見ていたとき、中隊の先任上級曹長から電話がかかってきた。

 

「どうしたんだろう??」

 

先任から電話がかかってくることは、滅多にないのだが・・・

 

もしかして服務事故?? とても嫌な予感・・・

 

恐る恐る電話に出ると、中隊長の様態が良くないとのこと。

一緒に病院へ行くため、すぐに部隊にきてくれということを言われた。

 

様態が悪いということは聞いていたが、ここまで急だとは思わなかった。

彼女に理由を説明して、帰らなければならないことを伝えた。

 

そして、急いで彼女と別れて部隊へ直行した。

 

部隊に到着した時、既に先任上級曹長と団の幹部が僕を待っていた。

 

「お休み中のところすみません。」

「小隊長、これから自衛隊病院まで車で行けますか?」

 

「もちろんです!」

 

中隊長の希望もあり、これまで見舞いに行くことができなかった。

入院してから約2ヶ月経過したが、初のお見舞い。

 

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(出典:http://kayas.jp/archives/1035670.html

 

病院に到着後、

恐る恐る中隊長のいる病室へ。

当時の病棟はかなり古く、そのせいかとても重苦しい雰囲気

 

あぁ、気分が悪くなってきた・・・ 

 

そして、病室へ。

ベッドの上の中隊長の憔悴しきった姿を目にして、言葉を失った

 

えっ??あの中隊長?

衝撃的だった・・・

体が大きく筋肉質だった中隊長が・・・

 

意識があり、僕たちの前では強気に起き上がろうとしていた。

2ヶ月前と比較して、信じられないくらいやせ細っていた

 

頭の中が真っ白になり、どういう言葉をかければいいのか

わからなかった。

 

僕は、中隊の現況と初降下行事が無事に終了したことを伝えた。

 

中隊長は力を振り絞ってかすれるような声で、

 

「すまないな。大吉には負担を掛けてしまっているが、検閲のときの姿を見ていて、お前なら大丈夫だと確信した。」

「俺は、もう中隊長としてもどれないかもしれないが、

次の中隊長が来るまで中隊をしっかり頼むぞ。」

 

これが中隊長と話した最後の言葉となった。

 

それから数日後、中隊長は逝去した。

現役の中隊長が亡くなることは滅多にない

 

朝礼で中隊長が亡くなったことを隊員たちに伝えた。

それから、一気に中隊の雰囲気が暗くなってしまった。

 

中隊長の通夜と葬儀

数年前には、降下訓練事故で隊員が亡くなっている

そして、今度は中隊長・・・

自衛隊という仕事をしていて一番辛い、仲間の死

 

葬儀には、空挺団長以下、空挺団の主要メンバーと中隊の隊員全員が参加し、

中隊を代表してお別れの挨拶をする機会をいただいた。

 

中隊長と僕とのお付き合いはとても短い間だったが、色々な思い出

溢れてくる。

 

  • 着隊の時、優しく迎え入れてくれた。
  • いつも一緒に昼食を食べに食堂に行き、色々な話をしてくれた。
  • 訓練検閲の時には、病魔に侵された体で最後まで指揮を執ってくれた。
  • 隊員たちにも大吉2尉は大丈夫だからしっかり付いていきなさいと伝えてくれた。

 

僕がお別れの挨拶をしているときには、隊員達が後ろですすり

泣いているのが聞こえた。

どんなにきつい訓練でも、弱音を吐いたり、泣いたりはしないのに・・・

お別れの挨拶をしている時には、嗚咽で途中で言葉が

喋れなくなった

最後に、中隊長にしっかりと中隊を統率していくことを誓った。

“部隊を背負う”ということ

中隊長が亡くなって以来、中隊の雰囲気は相変わらず暗い

 

この状況をなんとかしなければ・・・

どうすればいいんだろう・・・

 

途方に暮れた・・・

 

そのとき、幹部候補生学校での区隊長の言葉を思い出した。

 

人間もそうだが、部隊も成長、前進するためには「目標」が大切

部隊を前に進ませるためには、

常に「目標」を与え続けなければならない。

 

2月には、空挺団の「銃剣道競技会」があった。

 

これだ!!

 

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(出典:日本銃剣道連盟HP)

 

ちなみに、銃剣道陸上自衛隊の「戦技」の一つとなっていて、

陸上自衛官であれば、ほぼ全員が経験することになる。

銃剣道の競技人口は、もちろん自衛隊が一番多い。

 

剣道とは違う、こんなスポーツです。

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第62回全日本銃剣道優勝大会 一本特集 銃剣道 Jukendo

 

 

中隊対抗の競技会で、中隊から代表者7名が選出されて対戦する。

基本的に、最後の大将は中隊を背負っている中隊長が努める。

幹部は絶対に含めないといけないルールとなっている。

中隊に僕だけしかいないため、必然的に出場することになる。

 

この時期は、各部隊は「隊務運営計画」といって、

次年度の部隊の計画を作成しなければならない、

一年の中でも多忙な時期

計画の内容は、人事・総務、情報・保全、訓練、兵站など、多岐にわたる。

この作成も幹部の仕事なので、全部一人で作成した。

 

だから、銃剣道競技会の練成をしている時間は

殆ど無かった

でも、大将として出場することが決まっている。

 

 

中隊長が亡くなったあと、隊員たちは明らかに

路頭に迷っているような感じだった。

中隊として次の目標が無かったからだ。

こうなったのは、僕の責任

中隊長が不在の中、それを率先してやっていかなければならなかった。

 

そこで、上級陸曹や中隊の銃剣道の主要メンバー隊員達を集めて、

僕が感じていた中隊の現状を話し、陸曹達に競技会で「優勝」するためには

どうすべきか考えさせた。

 

「小隊長、銃剣道の合宿をして集中的に錬成をしたいです。」

「そして、他部隊と交流試合をさせてください。」

 

競技会の前ということもあり、各部隊が銃剣道の練成をできるだけ

平等にできるように体育館の使用統制がされていたので、

習志野駐屯地体育館はあまり使用できなかったためだ。

 

「わかった。じゃあ、銃剣道の練成計画を作成して見せてくれ。」

 

銃剣道錬成のリーダーに錬成計画を作成させた。

 

その錬成計画をもとに、他部隊と訓練や体育館・居室の場所調整し、

集中して錬成できる環境を作った。

 

空挺団以外の部隊と合宿し、この銃剣道競技会に集中できるように調整した。

期間は5日間

 

しかし、僕は唯一の幹部なので、駐屯地を離れることができない

中隊長の代わりとして、隊員達の人事評価隊務運営計画

完成させなければならなかった。

 

仕方ない・・・

 

5日後、

銃剣道錬成合宿を終えた隊員達が、笑顔生き生きとして帰ってきた。

よほど成果があったのかな?

 

「小隊長、帰隊しました。異状ありません。」

「合宿の調整ありがとうございました。お蔭で、充実した訓練ができました。」

 

隊員達の生き生きとした顔を見て、とても安心した。

なんか吹っ切れたな・・・

そう感じた。

 

後は、銃剣道競技会で目標の優勝を目指すのみ!

 

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そして、銃剣道競技会当日。

予定通り、中隊の大将として出場することになった。

銃剣道の練習はあまりできなかったが・・・

でも、そんなことは関係ない。

絶対に勝たなければならない

 

毎日、トレーニングジムでウェイトをやっていたので、筋力も増加し、

体重は空挺団に着隊当初から10kg近く増えていた。

錬成はしっかりできなかったが、

肉体的にパワーアップした自分には、

なぜか変な自信があった。

 

第1試合が始まった。

相手は、強豪の普通科中隊

 

うちには空挺団の銃剣道錬成隊に所属している隊員が2名いる。

だから、

僕の前の副将までで勝負は決まっているだろう・・・

と高をくくっていた。

 

しかし、

試合が進んで行くについれて、雲行きが怪しくなってきた

 

5人目まで終了したところで、3勝2負

 

これは、もしかしたらやばいパターンに??

 

6人目の副将は、僕が体もゴツくて能力も高い尊敬する陸曹

 

僕に、

「小隊長、心配しないでください。俺で試合を決めますから!」と。

なんと心強い言葉

 

おそらく合宿中も、大将までに勝負を決めないとまずい

ということを意識しながら錬成をしていたのだろう。

 

しかし、

試合が始まったが、なかなか勝負がつかない。

相手の隊員も中隊の副将を務めているくらいなので、腕前は一流

 

そして・・・

うちのチームの副将は

残念ながら一本を取られてしまった・・・・

 

( ゚∀゚)・∵. グハッ!! 

 

これは、まずい・・・

非常にまずい・・・ 

 

大将戦で勝敗が決まることになってしまった。

観戦者にとっては、試合としてとても緊迫した面白い試合

 

でも、実際にその場面に立たされると・・・

 

試合会場の熱気は最高潮

「うぉぉぉーー!!」 

漢たちのむさ苦しい雄叫びが体育館中に響き渡る。

 

空挺団長も、中隊長の亡くなった後の中隊の様子を気にしていたのか、この試合を見ていた。

 

((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

相手チームの中隊長は、部内幹部で身長も高い。

当然、僕よりも銃剣道の経験は豊富。

 

僕はといえば、自衛隊に入隊して4年程度。

そして、銃剣道の経験もそれほどない。

 

でも、そんなことは関係ない。

勝つしかない。

絶対に勝たなければならない

 

( ゚д゚ )クワッ!!

 

隊員の期待、思い、中隊のために・・・

隊員達が元気になり、

元気な中隊を取り戻せるように・・・

 

「相手を殺すつもりでやるしかない・・・」

それくらいの気持ちで臨まなければ、

場の雰囲気に飲まれてしまいそうだった

アドレナリンはマックス。 

 

そして、とうとう大将戦が始まった。

相手を面の中から、睨みつける。  ( ー`дー´)キリッ

  

「はじめ!」

 

気合を込めた全力の直突

勝負は一瞬だった。

一撃で決まった。

 

なんと、運良く?相手の胸部に木銃の先端がバシッ

と入った

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 

 

そして、相手の木銃(もくじゅう)は、僕の面辺りに・・・

 

ちなみに、木銃はこれ。

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はじめは、何が起こったのかわからなかった。 

 

審判を見ると、白旗が上がっていた。

つまり、勝ったのだ。   ゚(゚゚゚゚∀゚)キタコレ

 

試合を観戦していた隊員たちは飛び上がって喜び

大吉コールが流れた。

 

「うぉぉぉぉぉーーーーー!!!」

「だーいきち!!、だーいきち!!!」

 

あぁ、勝てて本当に良かった・・  ε-(´∀`*)ホッ

 

その後の試合結果は芳しく無く、

 

結局、決勝戦までは駒を進めることができなかった。

僕の対戦成績は、4戦中、3勝1引き分け

悪くない。

 

以前いた部隊で、陸曹隊員に相当鍛えられたからな・・・

まだ、銃剣道の動きを体が覚えていた。

 

これで、隊員達から信頼ポイントは溜まったかな??

 

目標の優勝を達成できなかったため、隊員たちも残念がっていたが、

競技会やそれまでの錬成を通じて中隊は

かなり盛り上がった

 

軍隊なので結果がすべてだが、

目標へ向かっている過程で隊員達の団結力や

お互いの信頼が深まっていくもの

目標までの過程の中で、

目的だった「中隊の明るい雰囲気・元気を取り戻す」

は達成できたのだ。

 

そして、中隊長が亡くなってから自粛していた中隊の宴会を解禁

やっぱり、団結のためには宴会は必要でしょ! 

 

銃剣道競技会と中隊の宴会で、

何とか中隊の雰囲気も明るさが戻り

次に着任する中隊長に無事に引き継ぐことになった。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように!

 

元・国防男子 大吉