元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

幹部候補生学校での生活 〜小銃射撃と野外訓練中の悩み(やっべーぞ!薬莢が無い!)〜

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

こんばんは。

元・国防男子の大吉です。

 

今日は、幹部候補生学校シリーズで実際に使用する火器、5.56mm小銃についてお伝えしたいと思います。

 

小銃射撃ができるのは、自衛官の特権

陸上自衛隊では、過去には小銃が紛失したり、盗難にあったり、実弾射撃中に精神的に病んでしまった隊員が同僚を射殺、負傷させて逃亡した事件も・・・

 

扱い方を間違えれば大変危険な武器で国民の信頼も失墜しかねないため、武器の扱い・管理は細心の注意を払って行わなければなりません。

 

 

89式5.56mm小銃

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陸上自衛隊の主流の小銃は、89式5.56mm小銃

 

部隊や教育隊によっては、まだ64式7.62mm小銃を使用している部隊などもある。

ちなみに、64式というのは、1964年に制式に採用されたということ。

 

↓ 64式7.62mm小銃

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幹部候補生学校では、89式5.56mm小銃を使用して訓練するため、1人1丁の小銃を貸与される。

 

小銃は、陸上自衛官にとって一番身近で自分の身や仲間の命を守るための武器

 

教育期間は、その貸与された銃で実弾射撃をしたり、武装障害走、行軍や戦闘訓練等の野外訓練の時には常に携行する。

 

代々の候補生が使用するものなので、射撃後や野外訓練後の武器整備は徹底的にやる。

 

いよいよ自衛官の仲間入り 〜銃貸与式〜

f:id:future_oriented:20180724203850j:plain(写真はイメージ:陸上自衛隊第36普通科連隊HPより引用)

 

幹部候補生学校でも、「銃貸与式」というのが実施される。

区隊長から一人ずつ小銃を貸与して貰う儀式だ。

 

区隊長が、

「銃!」と叫んで銃を差し出した際に、

候補生は、

「銃!」と叫んで、小銃をガッ奪い取る

そして、貸与された小銃の製造番号を読み上げる。

 

この銃貸与式をもって、自衛官としての自覚が出てくる。

 

生まれて初めて持った武器。

自衛官だからこそ、扱える武器。

国民を守るため、自分や仲間を守るための武器。

 

小銃自体は、たった3.5kg程の重さだが、それを扱う責任の重さはかなり重い

よって、銃を貸与された後は、銃口を人に向けないとか、行軍や銃点検の際の銃口の向き銃は常に携行すること等の基本的事項を徹底される。

 

小銃基本射撃検定

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幹部候補生学校では、実弾による小銃の基本射撃検定も実施される。

ちなみに、射撃検定は自衛官が1年に1回は受検しなければならないことになっている。

 

検定までに、伏撃ち(寝撃ち)膝撃ち(しゃがみ撃ち)と呼ばれる小銃の射撃要領を何度も練習する。

呼吸の仕方や撃ち方のリズム銃口が一定にならなければ、命中率は大きく変わる。

検定までに、射撃姿勢の「型」を徹底的に訓練したり、空包を使用した射撃により音や射撃の反動に慣れていく。

 

陸上自衛隊では、屋内射場屋外射場があるが、幹部候補生学校は、屋外射場で実弾射撃をする。

屋内射場は薄暗いので的が見えにくい、屋外射場は天候や風に影響を受けるという特徴がある。

 

僕たちが小銃射撃検定を実施したときは、大雨で霧が出て、的さえよく見えない状態だったので、検定不合格者が続出した。

でも、自衛官あらゆる気象条件を克服しなければならないため、そういう状況でも平常心を保って命中させなければならないのだ。

 

幹部候補生学校の小銃検定の目標は、200m先の的。

ちなみに、新隊員は25m、普通科隊員であれば一般的に300m先の的を使用する。

 

的には、5点圏、4点圏、3点圏があり、的から全く外れてしまった場合は、「0」となる。

 

小銃の基本射撃検定では、

伏撃ちで5発。

膝打ち(しゃがみ撃ち)5発の合計10発で、50点満点

 

時間制限があるため、照準後はリズミカルに射撃を実施しなければ、制限時間内に撃ち終わらない場合も。

撃ち切れなかった場合は、もちろんカウントされない

もし、1発撃ち切れなかったら、5点もムダにすることになってしまい、合格点に達するのが難しくなるため、制限時間内にすべての弾薬を射撃する必要がある。

 

部隊に行けば、職種によって異なるが、小銃の上級検定戦闘射撃と呼ばれる高度な射撃を実施することになる。 

幹部候補生学校での射撃は、あくまで基本的なもの。

 

空包の撃ち殻薬莢(やっきょう)を気にしながらの訓練

f:id:future_oriented:20180724230842j:plain陸上自衛隊公式HPより引用)

 

野外での訓練では、空包を使用する。

より臨場感ある実践的な訓練にするためだ。

射撃後は火薬が無くなり、金属の部分だけが残る。

 

↓ こんな感じ

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陸上自衛隊では、薬莢も100%回収

空包を使用する際も、小銃や機関銃に「薬莢受け」という薬莢を回収するためのものを装着して回収する。

 

しかし、脱落防止のため、ブラックテープで外れないように止めるのだが、脱落防止がしっかりできていなかったり、訓練で激しい運動をしていると、小銃と薬莢受けの間に隙間ができてしまい、薬莢が落ちて紛失してしまう。

 

撃ち殻薬莢は、火薬が無くなったただの金属なのだが、訓練で無くしてしまったら大変・・・

 

見つかるまで探さなければならない

 

僕が幹部候補生学校に入校中も、同期が訓練中に無くしてしまい、何時間も大雨の中探し回った記憶がある。

 

訓練が一通り終了したら、銃や装備品が破損していないか、紛失していないか等の点検を行う。もちろん、撃ち殻薬莢の数も。

 

とある野外訓練での出来事。

 

嵐の中での訓練がやっと終了し、最後の装具点検

皆、疲労困憊で「やっと訓練が終わったー」と安心していたとき、

 

ある同期が、 

「すみません。撃ち殻薬莢が、1コ足りません!」

 

付教官の顔色が変わり、

 

「何?よく探したのか?」

「もう一度、銃の中と薬莢受けの中を探してみろ!」

 

「ありませんでした!」

 

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「よし、全員で見つかるまで探せ!

 

 ( ゚∀゚)・∵. グハッ!!

 

みんな、声には出さなかったが、

「うわ〜。マジ?この大雨の中??」という表情。工エエェェ(´д`)ェェエエ工

 

見つかるまで地面に這いつくばり、訓練で使用した地域を片っ端から捜索する。

 

無い・・・全然見つからない・・・(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

雨が激しく水たまりもできているため、水たまりに沈んでしまっている可能性もある。

 

みんな嵐の中の訓練で疲労困憊し、雨で濡れて体が冷えているため、なかなか見つからないことにイライラしている。

 

「どこらへんで射撃をしたんだ?」

「どこを移動したんだ?」

 

無くしてしまった同期に確認しながら、大雨の中全員で一列になって隈なく探す

 

「こんな広くて、草がボーボーなのに見つかるわけがない。だし・・・」

 

皆が諦めかけていたその時、

 

「あった!!!見つけた!!!!」キタ━━(゚∀゚)━━!!

 

同期の一人が大声を上げた。

 

奇跡的に同期が見つけることができたのだ。

 

「うぉ〜!!!!!」ヾ(。>﹏<。)ノ゙✧*。

 

みんなの歓喜の雄叫びが上がり、拍手喝采

やっとみんなの顔に笑顔が戻った。

 

見つけた同期は、ヒーローもの (^o^)

 

無くしてしまった同期も泣きそうになりながらも、安堵の表情

 

しかし、 

僕は、この経験以来、空包を射撃するときに、恐怖を感じてしまうようになった。

 

(ちなみに、実弾射撃は射場でしか射撃しないため、実弾の撃ち殻薬莢を無くすことはまずない。)

 

撃ち殻薬莢を無くしたら大変なことになる。

同期達に迷惑がかかってしまう・・・

絶対に無くしてはいけない。

 

訓練中に草むらを駆けずり回り、空包射撃をしたあとは、「薬莢を落としていないか」気が気でない

 

空包射撃をしたら、何発射撃したかをしっかりと数える。

 

射撃後は、射撃後の煙や射撃音等で射撃した位置が暴露してしまうため、すぐに小移動しなければならない。

 

班長や小隊長の役職に就いている場合、隊員を指揮しないといけないため、いちいち撃ち殻の数なんか数えてられない。 

そのため移動する前には、射撃場所移動経路をしっかりと覚えておく。

 

役職に就いていない場合は、まず第1に撃ち殻薬莢の員数点検

 

射撃後の小移動後、

 

「1,2,3,4,5,6発。異常なし。」

「全部あった。よかった・・・」

 

射撃の度に薬莢受けを開けて数量を確かめ、移動間に無くさないようにジップロックに撃ち殻薬莢を入れてしまうのだ。

こっそりと・・・

 

そして、員数点検を終了したあとは、次の移動のために射撃をしないで、

「バーン。バーン」

と声を出してその場をしのぐ。

 

本当は、こういうことは良くないことだとわかっている。

そして、薬莢の数など気にせず、しっかりと状況に入ってやりたいのだが、仕方ない。

 

静岡の御殿場の東富士演習場などの米軍が使用する演習場に行けば、撃ち殻薬莢が沢山落ちている

米軍が使用したものだ。

「あー、米軍のように撃ち殻薬莢を気にせずに射撃がしたい」と何度思ったことか。

 

実弾をなくしてしまった場合は、自衛隊の信頼を揺るがす大問題なので絶対に捜索は必要だと思うが・・・・薬莢は・・・

 

最後に

f:id:future_oriented:20180724235019j:plain陸上自衛隊公式HPより引用)

 

射撃は、全自衛官が毎年1回は必ず実施しなければならないもので、入隊から定年までその技術を高めなければならないものです。

でも、射撃検定が1年に1度って少ないですよね?

普通科隊員であれば1年間の射撃弾数は多いと思いますが、その他の部隊では1人あたり100発も撃ちません

射撃検定前に、ちょこっと射撃姿勢を確認したりする射撃予習をやって終わりです。

そのため、なかなか射撃練度が上がらないのが実情です。

 

それから、野外訓練での空包の薬莢回収に関しても、これから入隊される方は僕と同じような悩みを持つかもしれませんね。

これから、野外訓練中の撃ち殻薬莢の員数をいちいち気にせずに射撃ができるようになることを願っています。(もしかしたら、既に薬莢受けが改良されているかもしれませんが。)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように。

 

元・国防男子 大吉