元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

これでもあなたは幹部自衛官を目指しますか?

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こんばんは。

元・国防男子の大吉です。

 

昨日は、「陸上自衛官の生活面での優遇」の追加事項として、世間一般よりも長い長期休暇を取得できると記事を書きました。

 

しかし、

陸上自衛隊実情として、休暇に関しては必ずしもすべての人が恵まれているわけではないんです。

特に、司令部勤務や多忙な部隊勤務の幹部自衛官は。

 

以前に「経験者が思う陸上自衛隊幹部候補生の6つの魅力」という記事を書きましたが、

幹部自衛官になることはメリットだけでなく、多少のリスクがあることも知ってもらいたかったので、それについての記事を書いてみました。

 

future-oriented.hatenablog.com

 

これから、幹部自衛官を目指そうと思っている人には、おすすめの記事です。

 

 

代休が溜まり続ける幹部自衛官

f:id:future_oriented:20180718131300j:plain陸上自衛隊公式HPより引用)

 

部隊によって業務の忙しさが異なる。

忙しい部隊は演習や訓練がみっちり計画されていて、なかなか休みも取れない

 

逆に、

それほど忙しくない部隊では、

自衛隊体育学校か?と思うほど、

隊員が駆け足等のトレーニングばかりしている部隊もある。

これは、各部隊長の裁量によるところもあるのだが・・・

 

かつて僕が所属していた部隊での経験

同じ駐屯地に、いつも課業開始の8時30分(当時)から駆け足や銃剣道ばかりをやっている部隊があった。

いつも、僕の事務所の横を楽しそうに駆けていくのを見ながら、羨ましく思ったものだ。

  

一方、うちの部隊は多忙で、土日を挟んだ自隊の訓練や訓練支援のため、隊員の代休がかなり溜まっている状態・・・・

部下の隊員を休ませてあげたいけど、次から次へ訓練支援要望が舞い込んでくる。

小隊の代休の平均は、20日程度もあった。

 

「こっちはこんなに忙しいのに、毎日課業中に駆け足ばっかりしやがって!」 

 

通常であれば、駆け足や筋トレ等のトレーニングは、課業が始まる前の零細時間を使って、「間稽古(まげいこ)」をするか、課業外に自主的にやればいい。

これが普通だと思うのだが・・・

年から年中、課業中に体力錬成ばかりやっている部隊は、余程暇な部隊と思われても仕方ない。

 

このように、部隊によって業務の忙しさはまちまちなのだ。

 

このように代休は消滅していく・・・

代休は、1年を経過してしまうと消滅してしまう。

よって、1年を経過してしまった代休は、赤線を引いて削除される。

 

つまり、赤線を引いて削除された代休分は、タダ働きになってしまう。

 

例えば、日当を1万円として、30日間の代休を消化できなかったとすると、

1年間で30万円のタダ働き。

 

これって、結構ひどいと思いませんか?

 

大量の代休を保有しているにも拘らず、赤線を引いて代休を消してしまうことが問題となった。

恐らく、防衛監察の時に問題となったと思われる。

なかには、30日、40日の代休を抱えながら消化できずに赤線で消している隊員もいたからだ。

 

このことが問題となって、

「指揮官は隊員の代休の取得状況をしっかり確認し、責任をもって代休消化をさせる」ようにお達しが出た。

 

上級部隊は、各部隊の隊員の代休消化状況を隷下部隊の部隊長に報告させ、適宜に指導して代休消化を促進させる。

その上級部隊の指導をもとに、各部隊の幹部自衛官は、できるだけ陸曹・陸士隊員を休ませて、代休の日数を減らすように努力する。

 

その結果、以前に比べて代休消化率は高くなったような気がする。

 

しかし、そんな中でもまだ休めていない人もいる。

多忙な部隊や司令部勤務の幹部自衛官だ。

 

幹部自衛官は、司令部や部隊の中核。

幹部の人数が少なければ、幹部が休めるチャンスはない。

そして、司令部の中には、定員に対して明らかに充足数が少なすぎる部署もある。

幹部が入校していたり、病気で休んでいたりという部隊もいる。

 

上記のような状況の場合、一人あたりの業務量が多くなってしまい、結局、土日も仕事をしなければ業務が回らない状況が出てくるのだ。

 

でも、上級部隊や部隊長からは

「しっかりと休め!」

「代休を消化しろ!」

「何で、まだこんなに代休が残っているんだ?」

と指導をされる。

 

でも、休みたくても休めない状況なので、仕方なく休んだふりをして仕事をして、代休を消化していく。

 

これが、実情

 

自分の休みを削って家族との時間を犠牲にし、やるべきことをしっかりやり遂げるという精神は素晴らしいと思うが、

 

やはり、この状況はおかしい・・・

 

消化できなかった代休は、お金に替えられる??

実は、

一般の幹部と異なり、中隊長や大隊長等の指定職と呼ばれる職に就けばその代休分は日当として規則で定められた額をお金に変えることができる。

 

しかし、通常、部隊長よりも幕僚として勤務する幹部の方が忙しいし、代休の日数も多い。

 

にもかかわらず・・・・だ。

 

代休をお金に替えられれば良いという問題でもないが、

これって、不公平だと思いませんか?

 

まあ、部隊長達もこれまでサービス残業は、沢山してきたんでしょうけど。。。

 

独身の幹部自衛官はまだいいかもしれないが、家庭を持っている幹部自衛官にとっては重大な問題

業務が忙しすぎて、家庭に目を向けることができなくなってしまい、家庭崩壊という幹部自衛官も結構いる。

 

僕は、この指定職の幹部だけ代休をお金に替えられるというシステムには、ずーっと疑問を感じていた。

 

やはり、休日に勤務をしたにも拘らず、業務多忙のため代休を消化できなかった隊員達には、しっかりと手当をしてあげなければ、うつ病になる隊員家庭が崩壊してしまう隊員は無くならないのだろう。

 

自衛官には、残業代という概念がない。

だから、平日の課業後の勤務に残業代がつかないのは仕方ないにしても、

せめて、多忙な幹部自衛官であっても代休を消化できるような体制(態勢)にしていくべきだと思う。

 

多忙な部隊での僕の経験談

中隊長不在で、中隊の幹部は僕だけの状況で・・・

f:id:future_oriented:20180718230216j:plain陸上自衛隊公式HPより引用)

 

僕も、超多忙な部隊で勤務をした経験があり、土日を跨ぐ演習や休日の行事が続いたため、1年間で溜まった代休は、50日を超えていたことがあった。

中隊長が病気で倒れてしまい、もう1名の幹部は鬱病で休養中。

中隊の幹部は僕だけという最悪な事態に・・・部下は約100名

 

中隊長の補充が次の定期異動までできなかったので、2等陸尉に昇任して新着任したばかりにも拘らず、代理の中隊長職を含めて、すべての係業務(人事・総務、保全、訓練、兵站等)をやった。

 

日中は、各種会議への参加や上級司令部への報告資料作成で終了。

課業後に、訓練計画の作成等を行っていた。

 

転属して間もなく、2等陸尉でまだ経験も浅く未熟だったことから仕事が捗らず、中隊長室のソファーで寝泊まりしたり、家に帰るときはいつも夜中の23時過ぎ

 

その所属していた部隊は体力もかなり要する部隊だったので、当時はトレーニングジムにも通っていた。

職場からそのままジムへ直行し、トレーニングをして家路についた。

寝るのは、いつも1時過ぎ

毎朝5時に起床して、6時前には部隊に到着して仕事をしていた。

駐屯地の勤務時間は、朝8時15分〜夕方17時までなので、平日は1日あたり約7時間の“残業”をしていたことになる。

  

自分がやりきらなければ、部隊が回らなくなるという責任感から、当時は必死

中隊に一人しか幹部がいないのだから仕方ない。

でも、僕にとってこの状況はワクワクするし、楽しかった!

 

2等陸尉に昇任したばかりだったが、将軍や佐官の会議にも部隊長代理として参加し、部隊の状況を報告できる。

駐屯地朝礼のときには、佐官の部隊長と同列に立てる。

この時期に、各部隊長の報告資料や発表を見たりして、自分が作成した資料や発言の要領も逐次に改善していった。

そして、幹部自衛官として、一番成長できた時期だった。

 

そして、最大の屈辱を味わった

しかし、中隊長が病に倒れてからは、かなり自分を追い込んでいた時期だったので、

疲れすぎて一度だけ遅刻をしてしまったことがある。

 

前日も、いつもどおりトレーニングジムに行って、寝たのは午前1時過ぎ。

 

・・・・・

 

ドンドンドン!

 

誰かが窓を叩く音が微かに聞こえる。

 

ドンドンドン!

「小隊長〜、小隊長〜」

  

はっ!?

 

目覚まし時計を見たら、0830

外は、いつもより明るい!

 

いつも0500にセットしているのに、全く気づかなかった・・・・

携帯電話には部隊の隊員からの大量の着信履歴が・・・

一瞬で目が醒めた。

 

「あ〜、しまった!!やらかしてしまった!!」(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

これまで一度も遅刻はしたことが無かったが、はじめての遅刻

 

ドアを開けると人事陸曹の姿が。

いつも6時には出勤してたのに、8時になっても部隊に来ていなかったことから、心配して家まで来てくれたのだ。

 

「ごめん!完全に寝坊した。すぐに準備をして行くから。」

 

と人事陸曹に伝えて、先に部隊に帰ってもらった。

 

そして、すぐに支度をして部隊に向かった。

 

部隊に到着後、

中隊の先任上級曹長から、

「小隊長、大丈夫ですか?家で倒れているのかと思いましたよ〜」

と言われ、本当に心配をかけてしまった。

 

僕は、遅刻が大嫌い! 特に、自分が遅刻することは許せない。

だから、待ち合わせをするときには、いつも30分前には現地に到着しているようにしている。

 

私生活でも、絶対に遅刻はしなかったのに・・・

とても屈辱的な出来事だった。

 

当時の残業時間は、土日を含めて200時間を超えていた。

 

それでもあなたは幹部自衛官を目指しますか?

幹部自衛官を目指すあなたには茨の道が待っている

僕の経験をお話させてもらったが、あなたが幹部自衛官を目指す限りは、いずれはこのような厳しい環境に身を置かなければならない時が来る。

 

僕が指揮幕僚課程に入校したとき、同期にこれまでの部隊での経験等を聞くことがあったのだが、

指揮幕僚課程に入校している学生は、ほぼ100%司令部や部隊での激務を経験している。もちろん、それ以外の幹部も。

 

なかなか家に帰れず、職場では上司に罵倒され、部下から突き上げられ、大量の業務に追われながら何とか責任感を持って最後までやり遂げ・・・

 

これが、初級、中級幹部自衛官の部隊や司令部での勤務の状況。

 

幹部を目指すことを嫌がる陸曹は多い。

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部隊等にいる陸曹は、部内幹部候補生(いわゆる、I(アイ)幹部)の受験を嫌がる人が多い。

正直、割に合わないからだ。

 

  • 多忙で、家になかなか帰れない。
  • 責任を取らなければならない。
  • 上司に怒られる。
  • 転属は2〜3年毎。
  • 給料も陸曹時代からそれほど上がらない。

 

そういう幹部の実情を知っているので、幹部自衛官になりたがらない。

それよりも、給料はそれほど良くないが、陸曹でいたほうが全然マシ

と考える陸曹が多いのだ。

 

茨の道も悪くない?

f:id:future_oriented:20180718225755j:plain陸上自衛隊公式HPより引用)

 

ここまで、僕の経験も含めて、幹部自衛官には厳しい道が待っていることをお話した。

  

確かに、幹部自衛官であることは大変。

でも、そのような大変な経験をしていくうちに、いつの間にか自分自身がとんでもなく成長しているのだ。

辛いと思うのは、自分が努力しているという証拠

 

それに、きつい状況を歯を食いしばって耐えていれば、必ず助けてくれる人がいる。

 

僕の場合は、中隊に幹部が居なかったが、部隊のみんながすごく協力してくれて、一気に信頼関係を築き上げることができた。

 

  • 夜遅くまで仕事をしていたら、外出から帰ってきた隊員が差し入れをしてくれた。
  • いつも宴会には誘ってくれるようになった。
  • 非常に扱いづらい定年前の上級曹長達も、言うことを聞いてくれるようになった。
  • 一番うれしかったのが、小隊陸曹が部隊の2曹以下の隊員を全員集めて、

  「これから大吉2尉の言うことには、絶対に文句を言うなよ!」

  「言ったら、俺がぶっ飛ばすぞ!」と言っているのを耳にしたとき。

  それ以来、ものすごく仕事がスムーズに捗るようになって、やりやすくなったのを覚えている。

  • その小隊陸曹が、夜9時ごろに部隊に来て、ビールの差し入れを持ってきてくれた^_^ 職場で飲酒は禁止なので飲めなかったが、本当に嬉しかった。

 

頑張っている姿を見てくれている人は、見てくれているのだ。

 

そして、

こういう強く、優しい人達が支えてくれるから、厳しくてもやっていけるんだと思う。

 

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。

今日も皆様にとって良い一日となりますように。

 

元・国防男子 大吉