元・陸上幹部自衛官の13年間の奮闘記

ダメダメ大学生だった元陸上自衛官の13年間の自衛隊での経験や教訓を共有するブログ

幹部候補生学校での生活 〜あー死ぬかと思った・・・10km行軍〜

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陸上自衛隊HPより引用)

 

おはようございます。

元・国防男子の「大吉」です。

 

今日は、幹部候補生学校の「行軍」という訓練について話したいと思います。

「行軍」とは、軍隊が隊列を整えて、輸送機関によらず移動すること。

距離の長短や持ち歩く装備品の軽重はありますが、

陸上自衛隊の殆どの部隊で実施されている訓練です。

 

僕は、これまで100km以上の行軍は何度もやってきましたが、

その中でも一番きつかったのが、

幹部候補生学校で一番始めにやる「10km」の行軍だった。

 

えっ?たったの10km歩くだけでしょ?」

と思う人もいるかも知れませんが、

重い荷物を持って歩いたことのない人や当時の天候によっては、

とてもきつい訓練になるのです。

 

完全に舐めていた10km行軍。しかし・・・

もともと、バスケットボールをやっていたこともあるし、体力には自信があったので、たったの10kmでいいんだ。「楽勝だな!」と高をくくっていたが、

実際にやってみるとかなりきつい訓練となった。

 

第1回目の行軍訓練は、たった10kmのコースだったが、

6月の梅雨の時期の蒸し暑い日で、

幹部候補生学校近傍の高低差の激しい山での訓練。

空身で走るのには慣れていたが、15kg以上の荷物小銃を持って、

半長靴を履いての訓練はもちろん初めて。

 

一発目の訓練ということで、規律正しく歩くための「手信号」を使いながら歩いたり、リーダーを育成するための教育ということもあり、

休止間は「座るな、荷物を下ろすなという統制があった。

 

 ・ 大雨のため、雨衣(あまい。レインコートのこと。)を着ているので、

  ムシムシして体力が奪われる。

 ・ 蒸し暑いので、水筒の水の減りがものすごく早い。

 ・ 小銃と約15kgの背嚢(はいのう)を背負っているため、肩が痛くなる。

 ・ アスファルトの道なので、足の裏がものすごく痛くなる。

 ・ 休止中に座れず、荷物を下ろせないないため、休止間も体力が奪われ、

  肩と足に負担がかかり続ける。

 ・ 地図を見ながらの行進なので、辛いけど頭も使う。

 

「ヤバイ、水筒の水が無くなりそう。まだ、半分も距離があるのに・・・」

 

ちょうど、防水処置をした地図を携行していたので、歩きながら地図上に雨水を溜めて、飲みながら進んだ。

 

身をもって水の大切さを学んだ。

 

行軍訓練間、教官達の激が飛び続ける。

 

行軍の間の幹部に休憩はない

休憩間に部下の様子や経路をしっかりと確認するんだ。

そして、リーダーとして、まだまだ余裕があるというところを部下に見せるんだ。

どんなにきつくても、やせ我慢だ!辛さを顔に出すな!

 

そんな事を言われても・・・

くるしぃ〜きつい・・・・肩と足が痛い・・・・)

周りに意識を向ける余裕が完全に無くなってしまった。

 

 

ゴールの幹部候補生学校へ到着する直前は、ヘトヘト・・・

足の膝から下は、ボロボロ・・・

歩くたびに足の裏に激痛が走る。

頭の中は、「辛い、きつい」という意識だけが支配・・・

水筒の水は残っておらず、喉はカラカラ・・・

塩分が足りないのか、体の力が抜けてきた・・・

 

マジで、やばいかも・・・

 

10kmだと舐めてかかったら、本当に大変な目にあった・・・

こんなに肉体的・精神的にキツイのは人生で初めてだった。

 

この訓練で教わったことは、実はとても大切なことだった。

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陸上自衛隊公式HPより引用)

 

部隊に配属後、この行軍訓練で教わったことは部隊を統率していく上で、

本当に大切なことだったに気づいた。

 

僕が、卒業後に配属された部隊は、検閲訓練で100km行軍をするのが当たり前。

幹部と陸曹は、全員「レンジャー課程」に行くのが必須の部隊

そう、陸上自衛隊唯一のパラシュート部隊「第1空挺団」。

別名「狂ってる団」。

 

着隊後、2ヶ月後には検閲訓練が計画されていた。

そう、検閲では、物料梱包をして、降下をして、約100km歩いて、

部隊行動をして、戦闘射撃検定をして・・・やることが盛り沢山・・・

着隊したばかりの僕は、もちろんレンジャーにも行っていないし、

「小隊長、本当に歩けるのか?検閲は大丈夫か?」と心配されっぱなし。

 

部隊の先任上級曹長からも、

「小隊長、100km行軍は絶対に歩き切らないとだめですよ。」

「途中で、止めてしまったら、後で必ず後悔します。」

「そして、部下は絶対に付いてきません!」と釘を刺された。

 

行軍のコースも幹部候補生学校の80km行軍のように平坦な歩きやすい道路ばかりでなく、

富士山の樹海等を通るようなアップダウンが激しく、獣道を通るような険しいコース。

 

「100km歩けなければ、ここの部隊ではやっていけない。部下からの信頼も得られない。絶対に歩き切らなければならない!」

と言う使命感責任感からアドレナリンが出っぱなしで、

2夜3日間の行軍中は殆ど眠くならず、腰を落として座ることもなかった。

 

幹部はやせ我慢。辛くても辛い顔を見せるな!

行軍の休憩中は、部下の目を見て健康状態を確かめ、声を掛け続けろ!

 

幹部候補生学校時代の教官からの教えを思い出して、これを実践し続けてみた。

 

空挺団に着隊して、まだ2ヶ月で部下との信頼関係もできていない。

行軍中、部下から

(この幹部は、休まないのか?背嚢を下ろさないのか?そんなので、最後まで持つのか?)というような不思議な目で見られていた。

 

何とか、100km完歩し、訓練検閲は無事に終了した!

  

結果、

自分自身の内面の成長としては、幹部としての自覚責任感を涵養することに繋がり、リーダーとして部下から信頼を少し得られることにも繋がったと思う。

 

部隊をまとめて行くためには、「信頼」がとても大切だ。

そして、「信頼」を獲得するには、時間がかかる。

また、一つの軽率な言動でこれまで築き上げてきた「信頼」が一気に吹き飛ぶ場合もある。

 

このとき、部下からの信頼を得るためには、どのように行動すべきかを身をもって感じた。

 

幹部候補生学校で学んだ教えは正しかったのだ。

 

行軍訓練に関するアドバイス

空挺団に所属時代、僕は年間に300km〜400kmの行軍訓練をしていた。

これから入隊するあなたに行軍訓練のアドバイスをすると、

 

 ① 装備品等はお金をかけて、良いものを揃える。

  ・ 靴下は厚手のものを準備

  ・ 靴のソールも、足への負担を軽減してくれるような良い物を準備

 ② ラックサック・マーチをする。

  ・ リュックに重い荷物を入れ、背負って歩く訓練をする。

 ③ 背嚢への荷物の入れ方

  ・ 軽いものは下、重いものは上に入れる。

 ④ 背嚢の紐の調節

  ・ 荷物の重量が肩に直接かからないように、リュックが後ろに少し倒れる

   くらいに背嚢の紐を調節する。(逆二等辺三角形のような形)

 ⑤ 水は、口の中を乾かすくらいに飲む。がぶ飲みはしない。

  ・ 水筒の水がすぐに無くなってしまい、バテるのが早くなる。

 ⑥ 水と同時に、塩分も摂取する。

  ・ 水だけだと、脱水症状を起こしやすくなる。

  ・ ポテトチップスをジップロックに入れてバリバリに割ったものはオススメ

 

上記の6つを実践するだけでも、体への負担のかなりの軽減になるでしょう!

できるだけ「」に歩けるように、試行錯誤してみてください。

 

 

最後まで読んでくれてありがとうございました。

今日も皆さんにとって、良い一日となりますように。

 

元・国防男子 「大吉」